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情報資料:TPP閣僚会合 大筋合意9月以降
TPP閣僚会合、9月以降 15年中の署名へ日程綱渡り
2015/8/6 2:00 日本経済新聞 電子版
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の参加12カ国による閣僚会合の月内開催が難しくなったことが5日分かった。7月の閣僚会合で大筋合意を見送った後、各国は8月中に再度開催することを目指していた。だが乳製品や知的財産を巡る調整は容易でなく、月内の開催は困難と判断したもようだ。日本政府は9月以降の開催を目指す方針だが、年内の署名に向けて一段と綱渡りの日程になってきた。
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複数の日米交渉関係筋が月内の開催は事実上困難になりつつあるとの認識を明らかにした。前回の会合後、甘利明経済財政・再生相は「8月末ごろに次回会合をする共通認識がある」として、間を置かずに次回会合を開けば大筋合意は可能との認識を示していた。
米政府の一部の幹部は既に夏季休暇に入っており、8月末までに水面下の交渉を実施して大筋合意の下地をつくることも難しくなっている。日本政府は8月中の開催を目指すべきだとの意向を示していたが、交渉を主導する米国は日程を確定すべきではないという立場を示していた。
米国では協定に署名する90日前までに米議会に通知する必要がある。2016年に米大統領選を控え、年内に署名を済ませたい考えだが、非常に厳しくなってきた。日本も今秋に予定される臨時国会でTPPの国会承認を得たかったが、日程的に難しい情勢だ。
7月末まで米ハワイ州で開かれた閣僚会合では乳製品の輸出拡大を強く求めるニュージーランドと受け入れ拡大に慎重な米国やカナダ、日本などとの対立が解消せず大筋合意を見送った。
全体の交渉でも、医薬品の開発データ保護期間について、12年間の保護を求める米国と5年間以上は認められないとするオーストラリアなどとの対立が残った。
参加12カ国は8月末にマレーシアで開く東南アジア諸国連合(ASEAN)経済閣僚会合に合わせる形で、TPPの閣僚会合を開くことも検討していた。
(http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS05H2V_V00C15A8EA2000/?n_cid=TPRN0003)
ニュージーランド:ティム・グローサー貿易大臣の考え(日経)
日本経済新聞2015年8月6日 |
アメリカ:シンクタンクの考え
日本経済新聞2015年8月6日 |
情勢分析 ニュージーランド外相が明かすTPP情勢
日本国内では、7月末でTPPが大筋合意に至らなかったことを、ニュージーランドを強く批判する論調で報じられた。その後、日本・アメリカ・オーストラリアの3国がニュージーランドを説得する形を作り、8月末に再び閣僚会合を開くことを目指していた。ただ、私のTPP交渉関係者からの独自情報によると様子は異なっている。日本は、最もモチベーション高く交渉をまとめようとするものの、会場で怒ったり、交渉の途中で内容がちょこちょこ変わる事があるなどして、交渉国から不満が漏れているという情報があった。
国内で、TPPは対中安全保障論が日に日に強くなる
確かに日本国内では、TPPは対中国の安全保障の一環だ、という論調が日に日に強くなり、もともとの自由貿易圏を作る、という目的は隅に追いやられているという印象だ。大筋合意失敗後に、アメリカ・オーストラリアと協力姿勢を取ろうとしたのも、この3国が中国脅威論を共有できるメンバーであるからだ。これはあまり表では語られることではないが、オーストラリアは海兵隊を誘致したがっているほど中国を脅威に見ている事情がある。だが、話はうまく進まなかった。
日米主導のTPP合意シナリオが暗礁に乗り上げる
情報資料のうち、ニュージーランド貿易大臣グローサー氏のインタビュー記事からは交渉の内幕の一端がわかる。日本とアメリカの間の自動車関税の撤廃内容は、メキシコにとっておどろくべきものであって、不満があったということだ。日米合意があればTPPは合意に向かうというのは、2つの大国のシナリオであって、それが全てではなかったということだ。
TPP漂流シナリオに基づいて日本の政治情勢をバージョンアップ
さて、日本の政治情勢についてバージョンアップさせておこう。本来7月末で大筋合意をし、その後秋の臨時国会で TPP協定を審議するというスケジュールだったが、今回の報道が事実であるならば、これは不可能に限りなく近づいている。
報道では、来月以降に交渉参加12カ国での閣僚会合となっている。「9月に開く」と決まっているわけではない。アメリカの職員は休暇に入っていると報じられている。日本くらいだ、休まず働かせても文句を言わない国民は(笑)。秋からは来年の大統領選に向けて本格的に選挙ムードになるため、米政府の歩み寄りは難しくなるとも言われている。
先日もブログで伝えたが、カナダの選挙が10月19日ときまり選挙期間中に入った。世論調査では与党が第2位。議会で過半数を取ることが難しくなっている。ひょっとすると政権交代の可能性もあるかも知れない、と見ておく。報道ではカナダ政府は選挙期間中も交渉を続けるとしていたが、選挙期間中は農産物保護を主張せざるを得ない状況が生まれている。
もし、次のTPP交渉参加12カ国の閣僚会合が9月にあり、そこで合意が行われたとしても、すでにスケジュールは2ヶ月遅れることになる。
自公VS野党の熾烈な選挙が続く 野党有利な情勢調査も
日本では、秋の臨時国会にはまにあわず、来年の通常国会での審議となる可能性があるだ。ただし来年1月からスタートする通常国会では、最初に予算の審議をしなくてはいけない。となればTPP関連の審議は春以降になる。春以降になれば7月の参院選のスケジュールと平行することになるだろう。政府は当初のシナリオに比べて世論のコントロールが簡単ではなくなる。さらに、9月に大筋合意になるとも限らない。
8月9月は安倍内閣にプラスの要因はない
日本は、これから政治情勢がカオスになる。大きな外交も控えている。8月末の岸田外務大臣の訪露が本当に実現するのか。9月頭の安倍首相の訪日白紙報道は実際にそうなるのか。9月末の国連出席もある。沖縄辺野古は9月10日まで一端休憩だが、9月10日以降に動き出す。安保関連法案の質疑も続く。少なくとも15日以降まで続けると報じられている。
選挙日程もある。しかも自公VS野党の構図の選挙が続く。8月23日投票日の岩手県知事選の前哨戦の盛岡市長選挙。8月20日告示9月6日投開票の岩手県知事選挙。9月13日投開票の山形市長選挙。これらが自公VS野党だ。ここから選挙情勢を理解しておくと良いだろう。ぶっちゃけると、自公が全敗の可能性がある。今のところ自公がハッキリ有利である選挙はこの3つにはない。
8月17日に、マイナスが予測されているGDP速報値が発表される(選挙情勢に影響する可能性は否定出来ない)。さらに米利上げが9月に行われるかどうかも不透明だ。
ハッキリ言う。安倍政権の支持率に明るい素材は、無い、と言っていいだろう。